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大同監査法人の代表社員のブログです。会計関連のトピックを中心に掲載する予定です。
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財務諸表の表示に関する予備的見解−3

2011/02/14 00:31
 キャッシュ・フロー計算書の直接法による作成

 DPでは、キャッシュ・フロー計算書について下記のような提案を行っています。
「キャッシュ・フロー計算書では、企業は、大半の企業が現在行っているような、純損益を営業キャッシュ・フロー純額に調整する方法(間接法)ではなく、営業活動に関する入金及び支払の主なカテゴリー(顧客から回収された現金、棚卸資産を取得するために仕入先に支払う現金など)を個別に表示しなければならない(直接法)。両審議会は、直接法の方が間接法よりも、財務諸表の表示の提案されている目的に整合することに着目した。営業カテゴリーで入金及び支払項目を表示することで、キャッシュ・フローのより有用な分解情報が提供される。さらに、直接法による表示は、営業資産及び負債並びに営業収益及び費用に関する情報を営業活動による現金の受払いに関連付けるのに役立つ。」
「提案されている表示モデルには、キャッシュ・フローを包括利益に調整する新しい明細表(財務諸表の注記に含まれる)が含まれる。この調整表では、収益が現金、再測定以外の発生項目及び再測定の構成要素(例えば公正価値変動)に分解される。こうした構成要素は、利用者が将来キャッシュ・フローを予測し、稼得利益の質を評価する場合にどのように役立つかがそれぞれ異なるため、利用者は、これらの構成要素を個別に分析することになる。」
 
 上記のように、DPでは、キャッシュ・フロー計算書は、直接法の方が投資意思決定に有用な情報を提供するので、間接法を禁止して、直接法にて作成する事を求めています。また直接法でキャッシュ・フロー計算書を作成すると、これまでのような損益計算書(今後は包括利益計算書)とのつながりがわからなくなるので、新たに調整表の作成を求めています。

 →私見ですが、一般投資家にとって、キャッシュ・フロー計算書では、主に営業活動CF、財務活動CF、投資活動CFの各合計金額がわかればよく、その内訳金額を知る事はそれほど重要な事ではないと思います。営業活動CF、財務活動CF、投資活動CFの各合計金額は、直接法も間接法も同額となるので、コスト・ベネフィットを考えた場合に、従来通り間接法の作成を認めるべきだと考えます。
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財務諸表の表示に関する予備的見解−2

2011/02/13 11:27
 包括利益の表示について
 
 IAS 第1号では、収益及び費用の項目の表示について、以下の2 つの方法の選択を認めています。
 (1) 単一の包括利益計算書で表示(1 計算書方式)
 (2) 2 つの計算書で表示(2 計算書方式)。

 米国基準では、SFAS 第130 号において、@営業成績を報告する単一の計算書(1 計算書方式)、A当期純利益から開示する独立の包括利益計算書(2 計算書方式)、B持分変動計算書、の3 つが示されています。このうち、@又はAの方法が推奨されていますが、強制はされていません。

 我が国の企業会計基準第25 号「包括利益の表示に関する会計基準」では、(1) 当期純利益を表示する損益計算書と包括利益計算書からなる形式(2 計算書方式)と(2) 当期純利益の表示と包括利益の表示を1 つの計算書で行う形式(1計算書方式)の選択適用が認められています。

 財務諸表の表示に関する予備的見解(以下DPと呼ぶ)では、単一の包括利益計算書で包括利益を表示すること、すなわち1 計算書方式への一本化が提案されています。

 2計算書方式と1計算書方式のいずれが妥当か?
 2 計算書方式を支持する意見は、主として、当期純利益と包括利益とを明確に区別する2 計算書方式の方が好ましいという見方や、1 計算書方式では最終行となる包括利益が過度に強調されることとなるという見方などに基づくものです。一方、1計算書方式を支持する意見は、@企業間の表示様式の差異をなくして比較可能性を改善すること、A財務諸表利用者の理解と情報活用を容易にすることを理由としています。

 → 個人的には、2計算書方式と1計算書方式のどちらでも良いと思いますが、確かにDPが指摘しているように表示では企業間でばらつきがあるより、いずれかに1本化した方がわかりやすいかもしれません。また、2 計算書方式を指示する意見は、これまでの当期純利益を重視する立場からでしょうが、1計算書方式でも当期純利益は区分掲記されるので、それによって当期純利益の重要性が低下するものではなく、将来的には1計算書方式へ一本化されるのではないでしょうか。
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財務諸表の表示に関する予備的見解

2011/02/12 12:14
 しばらくブログの更新をさぼっていましたが、また再開したいと思います。
 2008年10月にIASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)が、ディスカッションペーパー「財務諸表の表示に関する予備的見解」を公表しました。これを受けて2011年中に公開草案と新基準が公開される予定となっています。
 
 ディスカッションペーパーでは、下記の3つの目的を掲げています。
 @企業の活動の一体性のある財務の全体像を表わす。
 A企業の将来キャッシュ・フローを予測する上で有用となるように、情報を分解する。
 B利用者が企業の流動性及び財務的弾力性を評価するにあたり役立つ。
 
 具体的には下記のような変更が予定されています。
 1 財務諸表の様式
 (a) 企業は、事業活動に関する情報をさらに区分して、営業活動に関する情報と投資活動に関する情報を区分して表示しなければならない。
 (b) 企業は、事業活動の資金調達に関する情報を、資金調達の源泉により区分して表示しなければならない。
 (c) 企業は、非継続事業に関する情報を継続的な事業活動及び財務活動とは区分して表示しなければならない。
 (d) 企業は、財政状態計算書及びキャッシュ・フロー計算書において、法人所得税に関する情報を他のすべての情報とは区分して表示しなければならない。包括利益計算書において、企業は以下に関連する法人所得税費用に関する情報を区分して表示しなければならない。
   a 継続事業からの利益(事業活動及び財務活動からの損益の合計)
   b 非継続事業
   c その他の包括利益項目

 2 一体性のある財務諸表を表示する。
  一体性のある一組の財務諸表を表示するために、企業は、財政状態計算書、包括利益計算書及びキャッシュ・ロー計算書において、行項目、その説明及び情報の表示の順序を揃えなければならない。実務上可能な範囲で、企業は各計算書において個別項目を同じように分解、分類、及び合計しなければならない。

 3 財政状態計算書
  財政状態計算書は、現在のような資産、負債、資本の区分ではなく、主な活動(営業活動、投資活動及び財務k活動)ごとにグループ化される。
  企業が、資産と負債を流動性の順序で表示する方がより目的適合的な情報を提供すると考える場合を除いて、資産と負債は短期と長期のサブカテゴリーに分解される。

 4 包括利益計算書
  提案されている表示モデルでは、企業に現在認められている、収益及び費用の構成要素を損益計算書と包括利益算書とに表示する選択肢(2 計算書アプローチ)や、その他の包括利益に関する情報を所有者持分変動計算書で表示する選択肢(米国会計基準のみ)が削除される。すべての企業は単一の包括利益計算書を表示することになり、その他の包括利益項目は独立のセクションに表示される
 
 5 キャッシュ・フロー計算書
  キャッシュ・フロー計算書では、企業は、大半の企業が現在行っているような、純損益を営業キャッシュ・フロー純額に調整する方法(間接法)ではなく、営業活動に関する入金及び支払の主なカテゴリー(顧客から回収された、棚卸資産を取得するために仕入先に支払う現金など)を個別に表示しなければならない(直接法)。

 6 新しい調整表
  提案されている表示モデルには、キャッシュ・フローを包括利益に調整する新しい明細表(財務諸表の注記に含まれる)が含まれる。

 →上記のうち、キャッシュ・フロー計算書の間接法から直接法への変更は、企業にとって作業負担の増加が予想され、要注意項目ですね。
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機能通貨

2011/01/16 14:16
 外貨建取引とは、日本基準の場合、当然、円貨以外での取引の事を指しますが、IFRSでは、機能通貨以外の取引と定義されています。では、機能通貨とは一体何でしょうか?
 IAS第21号では、下記のように規定しています。

 「機能通貨とは、企業が営業活動を行う主たる経済環境の通貨をいう。」
 「企業が営業活動を行う主たる経済環境とは、通常、企業が主に現金を創出し支出する環境をいう。企業は、機能通貨を決定するのに次の要因を考慮する。
 (a)次のような通貨
  (@)財貨及び役務の販売価格に大きく影響を与える通貨
  (A)競争力及び規制が財貨と役務の販売価格を主に決定することになる国の通貨
 (b)労務費、材料費や財貨や役務を提供するためのその他の原価に主に影響を与える通貨」
 「次の要因は、企業の機能通貨となる証拠を提供するものである。
  (a)財務活動により資金が創出されるときの通貨
  (b)営業活動からの受取額が通常、留保される通貨」
 
 機能通貨とは、企業が営業活動を行う主たる経済環境の通貨と定義されているので、これまでの日本基準のように所在地国通貨=機能通貨という関係が崩れています。つまり、上記の定義に当てはめた結果、米ドルが機能通貨となる場合は、日本に本社のある企業であっても、米ドル以外の取引(円貨取引等)が外貨建取引となります。但し、大半の日本企業では、このようなケースは少ないと考えられ、通常はこれまで通り円貨が機能通貨になるケースが多いと考えます。この場合は、円貨以外の取引が外貨建取引となり、外貨建取引が発生する場合は、機能通貨である円貨への換算替えが必要となります。また、海外子会社等(支店含む)では、現地通貨が機能通貨になるケースが多いと思います。この場合は現地通貨以外の通貨から機能通貨である現地通貨への換算替えが必要となります。
 外貨から機能通貨への換算替えに伴う当該換算差額は、純損益に計上します。

 IFRSでは、機能通貨以外に表示通貨という概念があります。表示通貨とは、財務諸表が表示される通貨をいいます。通常、親会社では機能通貨=表示通貨というケースが多いと思いますが、海外子会社等の機能通貨と親会社の表示通貨は異なるケースが多いので、表示通貨への換算替えが必要となります。
 機能通貨から表示通貨への換算替えに伴う当該換算差額は包括利益として計上します。
 イメージとしては下記のようになります。

  機能通貨以外 → 機能通貨(換算差額は純損益) → 表示通貨(換算差額は包括利益)
 
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税効果会計

2011/01/09 16:56
 税効果会計については、日本基準とIFRSとで基本的考え方に差異はありませんが、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性についての取り扱いが異なります。

 日本基準では、下記取り扱いにより期末の会社の状況に応じて五つの区分に分類し、その区分に応じて回収可能性の判断指針が詳細に定められています。
 監査委員会報告第66号
 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い
 @ 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等
 A 業績は安定しているが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等
 B 業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等
 C 重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等
 D 過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等
 
 一方、IFRSでは、上記のような詳細なルールはなく、
 「繰延税金資産は、将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で、すべての将来減算一時差異について繰延税金資産を認識しなければならない。」
 「税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除に対しては、将来その使用対象となる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で、繰延税金資産を認識しなければならない。」
 と規定されているだけなので、過去の実績と将来の課税所得の発生予測について十分に検証する事が必要となります。
 
 尚、繰延税金資産と繰延税金負債の表示については、日本基準では、繰延税金資産・負債の発生に関連する資産・負債のBS区分に基づき、流動資産・負債、固定資産・負債の区分に表示することになっていますが、IFRSでは流動の区分に表示する事は認められておらず、固定資産・負債の区分に表示することになります。
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退職給付

2011/01/05 23:39
 退職給付の会計処理については、日本基準とIFRSとで根本的な差異はありませんが、過去勤務費用や数理計算上の差異の償却方法や簡便法の取り扱い等一部差異があります。
 日本基準では、過去勤務費用は、発生時費用又は平均残存勤務期間以内で償却する必要があります。一方IFRSでは、受給権が確定している従業員に係る過去勤務費用は、発生時費用処理、受給権が確定していない従業員に係る過去勤務費用は、給付の権利が確定するまでの平均期間にわたり定額法で費用処理を行うことになります。
 数理計算差異については、日本基準では、上記と同様、発生時費用又は平均残存勤務期間以内で償却する必要があります。IFRSでは、回廊アプローチ(Corridor Approach)を採用しています。回廊アプローチとは、未認識数理計算上の差異の正味累計額が、年金債務又は年金資産のいずれか大きい方の10%以内の場合は償却をせず、超過する場合は、その超過額を平均残存勤務期間内で償却を行う処理です。ところで、回廊とは一体何でしょうか?回廊とは、寺院などにおいて、中庭などを屈折して取り囲むように造られた廊下のことであり、比喩的に、両側に山や海がせまって細くなった地形のことを指すこともあります。ここでの回廊とは、年金債務又は年金資産のいずれか大きい方の10%金額の事を指しています。
 日本基準では、従業員数が少ない比較的規模の小さい会社については、簡便法が認められていますが、IFRSではそのような規定はありません。簡便法が引き続き認められるか否かは今後の検討課題です。
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リース

2011/01/04 19:42
 リース取引に係る会計処理については、日本基準とIFRSとで考え方に大きな違いはありませんが、ファイナンスリースの定義等いくつかの差異が見られます。
 日本基準では、ファイナンス・リースは下記要件を満たすものです。
 ファイナンス・リース取引とは、@解約不能、Aフルペイアウトのいずれも満たすリース取引であり、具体的には下記要件を充足する必要があります。
 (1) 現在価値基準
 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額の概ね90 パーセント以上であること
 (2) 経済的耐用年数基準
 解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75 パーセント以上であること
 IFRSでは、ファイナンス・リース取引を下記のように定義しており、日本基準のような具体的な数値基準は示しておらず、取引の実質によって判断することになります。
 「ファイナンス・リースとは、資産の所有に伴うリスクと経済価値を実質的にすべて移転するリースをいう。所有権が最終的に移転する場合もしない場合もある。」
 「リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかは、契約の形式よりもむしろ取引の実質により決まる。単独であっても組み合わせたものであっても通常、ファイナンス・リースとして分類される状況の例は、次のとおりである。
 (a)当該リースにより、リース期間の終了までに借手に資産の所有権が移転される場合
 (b)借手が、選択権の行使日の公正価値よりも十分に低いと予想される価格で当該資産の購入選択権を与えられており、リース開始日に当該選択権の行使が合理的に確実視される場合
 (c)所有権が移転しなくても、リース期間が当該資産の経済的耐用年数の大部分を占める場合
 (d)リース開始日において、最低リース料総額の現在価値が、当該リース資産の公正価値と少なくともほぼ等しくなる場合
 (e)リース資産が特殊な性質のものであり、その借手のみが大きな変更なしで使用できる場合」
 「次のような状況も、単独であるいは組み合わせにより、リースをファイナンス・リースとして分類する指標となり得る。
 (a)借手が当該リース契約を解約できても、その解約に関連する貸手の損失は借手の負担となる場合
 (b)残存資産の公正価値変動による利得又は損失が、借手に発生する場合
 (c)借手が、市場の賃借料相場より十分に低い賃借料で、次期のリース契約を継続できる場合」

 また、日本基準では重要性が乏しいリース取引(少額リース資産や短期リース取引)については、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるとされていますが、IFRSではそのような簡便処理は認められず、原則的処理を行う事になります。
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収益

2011/01/03 00:19
 収益の認識基準については、金融庁による「IFRSに関する誤解」でも取り上げられていますが、全ての企業に影響を与える問題であり、非常に関心度の高い項目です。よく言われるのが、売上の計上にあたり、IFRSを導入すると出荷基準が使えなくなり、検収基準に変更されるので期末にはすべての着荷や検収の確認をしなければならなくなる。また工事進行基準は認められなくなる。というものですが、これについては金融庁が下記見解を出しています。
「現在の日本基準は実現主義であり、現在のIFRSの収益認識基準(リスクと便益の買主への移転)に照らし合わせても、ほぼ同様の結果となることが多い。例えば、取引の形態によっては、着荷や検収の事実を一々確認しなくても、出荷の事実をベースに、配送に要する期間等を考慮して、合理的にリスクと便益の移転が認められる場合、その時点で売上の計上ができる場合がある。いずれにせよ、プリンシプルに照らして、個々具体的な事例に即して適切に判断することになる。
 現在、収益の認識に係るIFRSの見直しが進められているが、工事進行基準については、複数の指標を総合的に勘案して、財やサービスに対する支配が工事の進捗に合わせて移転しているのであれば、工事進行基準が適用できる方向で検討中。」
 IFRSが適用されると、物品の販売については、出荷基準から検収基準に変更せざるをえないと思いますが、その場合、着荷や検収の事実を全件確認しなくても、これまで通りにシステム上は出荷基準で処理をしておき、決算期末のみ、みなし検収基準等を用いて売上及び仕入金額の調整を行う事も認められるので、大規模なシステム変更等を行う必要はないものと考えられます。また、工事進行基準も認められる方向で検討されているようです。
 
 日本基準では、収益認識は実現主義によることになっており、具体的には@財の移転または役務提供の完了、A対価の受取、の二つの要件を満たす必要があります。
 IFRSによる収益認識基準は、下記の要件を満たす必要があります。
 【物品の販売】
 (a)物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を企業が買手に移転したこと
 (b)販売された物品に対して、所有と通常結びつけられる程度の継続的な管理上の関与も実質的な支配も企業が保持していないこと
 (c)収益の額を、信頼性をもって測定できること
 (d)その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
 (e)その取引に関連して発生した又は発生する原価を、信頼性をもって測定できること
 【役務の提供】
 (a)収益の額を、信頼性をもって測定できること
 (b)その取引に関する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
 (c)その取引の進捗度を、報告期間の末日において信頼性をもって測定できること
 (d)その取引について発生した原価及び取引の完了に要する原価を、信頼性をもって測定できること
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リストラクチャリング引当金

2011/01/02 10:03
 今回は、リストラクチャリング引当金について検討します。日本基準では、リストラクチャリング引当金についての個別規定はなく、あくまでも引当金の一般的要件に該当する場合に事業構造改革費等の名目で計上されているに過ぎませんが、IFRSではリストラクチャリング引当金について一般的要件に加えて下記の追加個別要件を定めています。つまり、リストラクチャリング引当金は、引当金の一般的要件を満たした時にのみ認識されますが、一般的要件をリストラクチャリングにどのように適用するかについて定めており、リストラ費用を具体的に何時の時点で認識すべきかを明らかにしています。
 @企業が、リストラクチャリングについて少なくとも以下の事項を明確にした詳細な公式計画を有していること
  ・関係する事業の全部またはその一部
  ・影響を受ける主たる事業所
  ・雇用契約終結により補償を受けることになる従業員の勤務地、職種及びその概数
  ・企業が負担する支出
  ・当該計画が実施される時期
 A企業がリストラクチャリング計画を開始することによって、又はリストラクチャリングにより影響をうける人々にその主要な内容を公表することによって、企業がリストラクチャリングを実行するであろうという妥当な期待を、影響を受ける人々に惹起していること
 上記のように、リストラクチャリング引当金を計上するには当該計画が詳細かつ重要な変更が起こり得ないような時間的枠組みの中でリストラクチャリングが完成するように計画されている事、またリストラクチャリングにより影響をうける人々に計画が公表される必要がありますので、単に経営者の決定のみでは引当金を計上する事は出来ません。
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引当金

2011/01/01 00:57
 今回は、引当金について。
 日本基準では、企業会計原則注解18で設定要件が定められています。
 @将来の特定の費用又は損失である。
 A発生の原因が当期以前の事象に起因している。
 B発生の可能性が高い。
 C金額を合理的に見積もる事が出来る。

 IFRSでは、下記の条件を満たす場合に、引当金の計上が必要となります(IAS第37号)。
 (a)企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的又は推定的)を有しており、
 (b)当該債務を決済するために経済的便益をもつ資源の流出が必要となる可能性が高く、
 (c)当該債務の金額について信頼性のある見積りができる場合

 法的債務とは、次のものから発生した債務です。
 (a)契約(明示的又は黙示的な条件を通じて)
 (b)法律の制定
 (c)法律のその他の運用

 推定的債務とは、次のような企業の行動から発生した債務です。
 (a)確率されている過去の実務慣行、公表されている方針又は十分に具体的な最近の声明によって、企業が外部者に対しある債務を受諾することを表明しており、
 (b)その結果、企業はこれららの債務を果たすであろうという妥当な期待を外部者の側に惹起している。
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ヘッジ会計

2010/12/31 18:07
 今回は、ヘッジ会計について。ヘッジ会計については、2010年12月にIFRS第9号で公開草案が出ており、今後IAS第39号は改訂される予定です。以下は、現状(IAS第39号)の取り扱いについての解説です。
 日本基準では、ヘッジ会計は、繰延ヘッジが原則処理となっています。繰延ヘッジとは、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる事により、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益認識時点を一致させるための会計処理方法です。但し、その他有価証券については、時価ヘッジが認められ、当該資産に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識することもできます。
 これに対し、現行IFRSでは(IAS第39号第86項)、ヘッジ会計は主に公正価値ヘッジとキャッシュ・フロー・ヘッジが適用されます。これらは、ヘッジ対象の性質によって適用されるものであり、公正価値ヘッジは、金融資産・負債の時価変動をヘッジするものですが、キャッシュ・フロー・ヘッジは、将来のキャッシュ・フローをヘッジすることを目的としています。例えば、金利スワップを例にとると、時価の変動する債券を購入し、金利変動による債券の価格変動リスクをヘッジするために金利スワップを締結する場合は、公正価値ヘッジが適用され、借入金の金利を固定するために金利スワップを締結する場合は、キャッシュ・フロー・ヘッジが適用されます。
 公正価値ヘッジは、日本基準でいう時価ヘッジ処理、キャッシュ・フロー・ヘッジは、繰延ヘッジ処理に相当するものです。正確には、キャッシュ・フロー・ヘッジの場合、評価損益をその他包括利益に計上し、その後ヘッジされた予定キャッシュ・フローが純損益に影響を与えるのと同じ期に資本から純損益に組替調整額として振り替えます。但し、ヘッジ有効性評価において有効とされた部分のみが対象です。
 なお、日本基準では、為替予約の振当処理及び金利スワップの特例処理が容認されていますが、IFRSではそのような例外処理についての規定はないので、原則的処理を行うことになります。
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債権の減損(貸倒引当金)

2010/12/30 18:13
 債権の評価については、日本基準では、期末債権区分ごと(以下参照)に貸倒引当金の設定が必要となりますが、IFRSでは、貸倒引当金はその定義(法的又は推定的債務に限る)より引当金には含まれず、減損の対象となっています。

【日本基準】
1.債権の区分
(1) 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(一般債権)
(2) 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)
(3) 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)
2.貸倒見積高の算定方法
(1) 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。
(2) 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。
@ 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法
A 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法
(3) 破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする

【IFRS】
 IAS第39号
 第58項 
 企業は、報告期間の末日ごとに、償却原価で測定されている金融資産又は金融資産のグループが減損している客観的証拠があるかどうかを検討しなければならない。そのような証拠がある場合には、企業は、減損損失の金額を算定するために、第63項を適用しなければならない。

 第63項
 償却原価で測定されている金融資産に係る減損損失の客観的な証拠がある場合には、当該損失の金額は、当該資産の帳簿価額と、見積将来キャッシュ・フローを当該金融資産の当初の実効金利で割り引いた現在価値との間の差額である。当該資産の帳簿価額は、直接に又は引当金勘定を通じて減額しなければならない。当該損失額は純損益に認識しなければならない。

 第65項
 以降の期間において、減損損失の額が減少し、その減少が減損を認識した後に発生した事象に客観的に関連付けることができる場合には、以前に認識された減損損失は、直接に又は引当金勘定の修正により戻し入れなければならない。その戻し入れによって、当該金融資産の帳簿価額が、減損が認識されていなかったとした場合の、減損を戻し入れた日現在での償却原価を超過する結果を生じさせてはならない。戻入額は、純損益に認識しなければならない。
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金融商品−金融商品の区分

2010/12/30 11:02
 金融資産の区分ですが、日本基準では下記区分となり、それぞれで評価方法が異なります。
  @売買目的有価証券
  A満期保有目的の債券
  B子会社株式及び関連会社株式
  Cその他有価証券
 IFRSでは、現状はIAS39号で金融資産の区分を定めていますが、IFRS9号が承認され、2013年1月1日以降開始事業年度から下記取り扱いが適用されます。
  @償却原価で測定される金融資産
  A公正価値で測定される金融資産
 償却原価で測定される金融資産は、(a)金融資産が契約金利に基づいて管理されている。(b)当該金融資産が基本的な貸付金の特徴のみを有している。の両方の条件に該当する必要がありますが、これらの両方を満たす基準としては、具体的には下記の二つの条件を充たすものです。
 @契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産を保有されている。
 A金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。 
 (注)ここでの事業モデルとは、金融資産を管理する方法です。

 金融資産のうち、有価証券の評価については、上記区分に応じて、償却原価または公正価値で評価されます。
 公正価値評価の場合、原則として純損益に計上しますが(FVTPL)、売買目的で保有されていない有価証券については、その他の包括利益を通じて公正価値評価(FVTOCI)を行う事が出来ます。但し、当初認識時にFVTOCIを選択適用した場合は、損益へのリサイクリングは出来ません。
 →FVTPL=Fair Value Through Profit or Loss 
 →FVTOCI=Fair Value Through Other Comprehensive Income
 →リサイクリング=その他包括利益として処理した評価損益を売却時に洗い替え処理を行い、売却損益を当期純利益に計上する事。
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有給休暇引当金

2010/12/12 14:48
 前回より金融商品について記載していますが、ちょっとおもしろいと思ったので、今回は有給休暇引当金を取り上げてみたいと思います。日本基準では、有給休暇引当金を計上する事はありませんが、IFRSでは、計上が要求されます。日本では、有給休暇は、なかなか消化する事が出来なかったり(日本人は休暇を取ることに一種の罪悪感を感じたり、有給休暇を申請するのに上司の顔色を伺ったりと社内の雰囲気が気になることがありますよね。この忙しいのに休暇をとってバカンスか!みたいな感じで)、あるいは未消化分を買い取るケースも少ないのですが、欧米では100%取得が当たり前といった環境があり、有給休暇の消化状況に大きな違いがあるので、引当金に対する考え方も自ずと変わってきます。
 有給休暇引当金とは、期末の未消化分を給与換算して、引当金計上するのですが、その説明だけでは何の事かピンとこないと思います。例えば賞与の場合は、翌期に支払われる賞与について、当該賞与の支給対象期間のうち当期に属する金額を、賞与引当金として計上します。これに対して有給休暇の場合、休暇の付与時点で給与の支給は完了しています(給与の支給金額には、有給休暇分も含まれているので)。有給休暇の使用期限到来時に有給休暇の未消化分を買い取るケースもありますが、そもそも買い取りを前提にした制度は違法であるため、買い取りは、あくまでも事後的な対応という取り扱いとなります(結果的に未消化分となった休暇分を買い取るという事です)。
 有給休暇引当金の目的は、費用の期間帰属の適正化にあります。よって、費用サイド(借方)をまず検討する必要があります。単純化した下記の例で考えてみます。

 @2010年度 
 給与2,000,000円 就業日数200日(有給含む) 実出勤日200日 有給休暇付与10日 取得0日 
 A2011年度 
 給与2,000,000円 就業日数200日(有給含む) 労働日数180日 有給休暇付与10日 取得20日 

 年間10日間の有給休暇付与があり、2010年度は0日の取得、2011年度は2010年度の繰越分を含めて20日の有給休暇を取得したとします。この場合、各年度の給与支給額は2,000,000円ずつであり、このままであれば各年度は2,000,000円の給与費用が損益計算書に計上される事になりますが、これは妥当でしょうか?という問題です。
 IFRSの考え方は次のとおりです。2010年度は、有給休暇を全く取得していません。年間の就業日数は200日で、これには有給休暇の10日を含んでいるので、実際には190日の出勤で良いのですが、200日出勤しています。これは、10日分の有給休暇を消化せずに、来期に繰り越したからです。つまり、言い換えると、この10日分は、従業員が来期の出勤分を当期に前倒しで役務提供したことになります(あくまでも来期に有給休暇を消化するという事が前提です)。これを日割換算すると100,000円相当になるので、2010年度に損益計算書に計上する給与額は2,100,000円とするのが妥当ではないかという事です。2011年は、190日の出勤が必要ですが、前期の有給休暇10日分を取得しているので、実際には180日の出勤となっています。つまり、10日分は、既に前期に役務提供が完了しているので、2011年度は1,900,000円の給与計上で良いのではないかという事です。これを仕訳にすると下記のとおりです。

 2010年度の仕訳
 (借)給与 2,000,000 (貸)預金 2,000,000
 (借)給与 100,000  (貸)有給休暇引当金 100,000

 2011年度の仕訳
 (借)給与2,000,000  (貸)預金 2,000,000
 (借)有給休暇引当金 100,000 (貸)有給休暇引当金戻入 100,000

 このように有給休暇引当金の計上は、費用(借方側)の期間帰属の適正性を目的としてます。よって、貸方側である有給休暇引当金を未払費用相当と考えるとわからなくなります。
 日本の場合、有給休暇を消化せずに期限切れとなる事が多く、上記例で言うと初年度200日の出勤、翌年度200日の出勤というように消化率0となるケースも見受けられますので、有給休暇引当金を設定する根拠すなわち有給休暇が翌年度以降に消化されるという前提が無ければ、有給休暇引当金は計上されない事になります。
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金融商品−金融資産の消滅の認識

2010/12/11 11:50
@金融資産の消滅の認識について
 金融資産の消滅の認識については、金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法(リスク・経済価値アプローチ)と、金融資産を構成する財務的要素(財務構成要素)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法(財務構成要素アプローチ)とがあります。
 リスク・経済価値アプローチは、言い換えると全部アプローチであり、財務構成要素アプローチは、部分アプローチというイメージです。例えば、受取手形の割引取引を考えてみます。受取手形の割引は、法的には手形の譲渡ですが、手形が不渡りになった場合は、譲渡先から買い取り義務(偶発債務)が発生します。リスク・経済価値アプローチでは、手形の割引は金融資産のリスクと経済価値のすべてが他に移転しているわけではないので(偶発債務が一部分として残る)、手形債権の消滅を認識する事は出来ませんが、財務構成要素アプローチでは、法的に手形債権は譲渡され支配が移転しているので、手形債権の消滅を認識し、かつ偶発債務の認識を行うことになります。
 現在、日本基準は、財務構成要素アプローチであり、IFRSは、リスク・経済価値アプローチですが、ローン・パーティシペーションやデット・アサンプションについては、日本基準でも例外的にリスク・経済価値アプローチ的考え方に基づき、オフバランス処理が認められています。
 ローン・パーティシペーションとは、簡単に言うと、銀行が持つ貸出債権を証券化して、債権から生じるCFとリスクを参加者に移転する契約です。但し、これはあくまでも銀行と参加者との契約であり、銀行と債務者の権利義務関係に何ら変化はありません。財務構成要素アプローチでは、銀行と債務者の権利義務関係に変化はなく、債権の支配は移転していないので、債権の消滅は認識出来ません。一方、リスク・経済価値アプローチによれば、貸付債権のリスクとCFは参加者に移転されているので、貸付債権の消滅を認識する必要があります。すなわちオフバランスになるという事です。
 デット・アサンプションとは、支払期限が到来していない社債などの債務を有する企業が、当該元利金債務額に手数料などを追加した金額を銀行等に預託する代わりに、銀行等が債務履行を肩代わりする取引のことですが、法的には社債権者等との関係で原債務が消滅しているわけではなく、偶発債務は残ります。よって、財務構成要素アプローチでは、社債者等と債務者の権利義務関係に変化はなく、債権の支配は移転していないので、債務の消滅は認識出来ません。一方、リスク・経済価値アプローチによれば、社債債務のリスクとCFは肩代わりした銀行等に移転されているので、債務の消滅を認識する必要があります。すなわちオフバランスになるという事です。
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棚卸資産

2010/12/11 11:45
 棚卸資産については、我が国では企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」があり、IFRSと大きな差異はありませんが、下記の取り扱いが異なります。
 IFRSでは、原価配分方法は、後入先出法は認められていませんが、日本基準でもコンバージェンスとして2010年4月1日以降開始する事業年度から、後入先出法は認められなくなりました。後入先出法を認めないのは、BS重視のIFRSとしては、先に仕入れた古い商品等が残ると在庫金額に含み損や含み益が混ざりマズイと考えている事、期末近くで在庫の購入操作による粉飾の恐れがある事等が理由のようです。あと、売価還元法は、原価と近似する場合のみ簡便法として認められています。
 →売価還元法とは、百貨店やスーパー等の小売業で商品別受入管理が困難な場合に、期末在庫商品の売価に原価率を乗じて期末在庫金額を算定するという簡便的法です。従って、原則的方法を用いて計算した結果と差異が発生するのは当然であり、原価と近似しているか否かをどのように立証するのでしょうか?会計数値というのは、絶対的真実ではなく、相対的真実なのですから、売価還元法が、実務的要請から認められた簡便法であっても、既に会計慣行として実務に定着している方法であり、当該処理を継続適用することで真実性は担保されると思うのですが・・・ 
 棚卸資産の評価ですが、日本基準では、従来、原価法が原則的方法であり、例外として低価法が認められていましたが、企業会計基準第9号により低価法(収益性の低下に基づく簿価切下げ法)が強制適用となり、IFRSとの差異はなくなっています。但し、日本基準の場合、前期に計上した簿価切下額の戻入れに関しては、洗替え法と切放し法の選択適用が認められていますが、IFRSでは、棚卸資産を原価以下に評価減する原因となった従前の状況がもはや存在しない場合、又は経済的状況の変化により正味実現可能価額の増加が明らかである証拠がある場合には、評価減の戻入れを行うため、新しい帳簿価額は原価と修正後の正味実現可能価額とのいずれか低い方の額となり、実質的には洗替え法の適用となります。 
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資産の減損

2010/12/02 23:37
 減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であり、日本基準とIFRSとで考え方の大きな違いはありません。
 但し、日本基準では、@減損の兆候の把握 → A減損の認識の判定 → B減損損失の測定の3ステップを踏んで処理するのに対し、IFRSでは、@減損の兆候の把握 → A減損損失の測定と2ステップで処理する事になります。要するに、日本基準のような減損の認識の判定として、割引前将来キャッシュ・フローと簿価の比較は行わずに、減損の兆候がある場合は、減損損失の認識及び測定を行う事になります。
 日本基準で認識の判定を行う理由は、減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存しますが、将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ないので、その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当であるとされています。IFRSでは、このような考え方は採用していないので、日本基準と比較して早期に減損損失を認識することになり、より保守的な会計処理と言えます。
 但し、IFRSでは、期末において、過年度にのれん以外の資産について認識した減損損失がもはや存在しないか、又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを評価して、そのような兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、損失の戻し入れを行う必要があります。日本基準には、このような減損損失の戻し入れを行う規定はありません。
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投資不動産

2010/12/01 23:24
 IFRSでは、IAS第40号「投資不動産」で、投資不動産に係る会計基準を定めています。我が国では、従来、投資不動産に係る会計基準は存在していませんでしたが、IFRSへのコンバージェンスの一環として、平成22年3月期より「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」を設け、賃貸等不動産に係る時価情報の開示を求めています。
 投資不動産とは、
 「次の目的を除き、賃貸収益若しくは資本増加又はその両方を目的として保有する不動産である。
 (a)物品の製造若しくは販売又はサービスの提供、又は経営管理の目的のための使用 
 (b)通常の営業過程にある販売」
 と定義されており、要するに自己使用不動産と販売用不動産以外の不動産となり、日本基準の賃貸等不動産と殆ど差異はありません。
 投資不動産の測定基準としては、原価モデルと公正価値モデルがあり、いずれかを選択適用することになります。原価モデルを選択した場合は、公正価値を財務諸表に注記する必要があり、公正価値モデルを選択した場合は、毎期、公正価値にて再評価を行い、差損益は、発生期間の損益として認識します。
 日本基準の「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」は、会計処理を定めているのではなく、あくまでも開示基準であり、投資不動産の会計処理としては原価モデルしか認められていないので、IFRSでいう原価モデルの注記に相当するものを定めているにすぎません。
 ここで、公正価値とは、「独立第三者間取引において、取引の知識がある自発的な当事者の間で、資産が交換され得る価額をいう。」と定義されており、活発な市場における価格がない場合は、公正価値の見積りも容認されています。日本基準での時価は、「公正な評価額をいう。通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいう。」と定義されています。
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無形資産

2010/11/29 18:54
 我が国では、無形固定資産に係る包括的な会計基準等はなく、企業会計原則や財務諸表等規則等で無形固定資産の種類を例示列挙するに止まりますが、IFRSでは、IAS第38号「無形資産」で包括的な基準を定めています。
 IAS第38号では、無形資産を下記のように定義しています。
 @過去の事象の結果として企業が支配している。→支配
 A将来の経済的便益が企業へ流入することが期待される。→将来の経済的便益
 B物理的実態のない識別可能な非貨幣制資産である。→識別可能性
 上記定義に該当するものは、無形固定資産として処理することになりますが、判断するには定義が抽象的で非常にわかりにくいですね。一般的事例として下記のようなものを列挙しています。 
 a ソフトウェア
 b 特許
 c 著作権
 d 映画フィルム
 e 顧客名簿
 f モーゲージ・サービス権
 g 漁業免許
 h 輸入割当額
 i 独占販売権
 j 顧客又は仕入先との関係
 k 顧客の忠実性
 l 市場占有率及び市場取引権
 顧客名簿等、従来の日本基準では使用されていなかった項目が例示されていますが、無形資産は、企業結合により取得するケースが多く見受けられ、これまでは企業結合の際に超過収益力として一括処理されていたのれんを、今後は顧客名簿やブランド等として個別に識別して処理する必要があります。
 無形資産として認識した後の会計処理ですが、現行日本基準では、借地権、電話加入権以外の無形固定資産は税法耐用年数で減価償却するケースが多いですが、IFRSでは、IAS第38号89項で「無形資産の会計処理は、耐用年数を基礎とする。耐用年数を確定できる無形資産は償却し、耐用年数を確定できない無形資産は償却しない。」
とあるように、まず資産ごとに耐用年数の確定の可否を検証し、耐用年数を確定出来るものは減価償却を行い、確定出来ないものは減価償却を行わず減損の対象とすることにしています。
 →無形資産の耐用年数を見積もる事は、有形固定資産以上に困難だと思います。有形固定資産の場合は、物理的に減価していくので、構造、用途、実績等により耐用年数のおよその見当はつきますが、無形資産の場合は、経済的価値の効果の及ぶ期間を見積る事が必要となり、客観的な見積りと立証は相当な困難が予想されます。 
 日本基準との重要な相違点として、のれんの取り扱いがあります。日本基準では、のれんは、20年以内の期間で規則的に償却することになっていますが、IFRS第3号ではのれんを「企業結合で取得した、個別に識別されず独立して認識されない他の資産から生じる将来の経済的便益を表す資産」と定義し、識別不能という点で無形資産から除外し、償却を禁止して、毎期減損の判定を行うことにしています。
 あと、研究開発費ですが、日本基準では、支出時に費用処理しますが、IFRSでは研究費は支出時費用処理、開発費については、一定の条件を立証出来る場合に無形資産として認識し、償却を行うことになります。
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有形固定資産

2010/11/26 22:22
 有形固定資産は、多くの会社でIFRS移行による影響を受ける項目だと思います。
 まず、よく話題となるのが、減価償却の方法です。日本基準では、主に定額法か定率法により、税法の耐用年数をもとに償却計算するケースが多いと思います。耐用年数については、会計理論上は、税法基準によらず自社で耐用年数を見積って設定すべきと思いますが、見積りの客観性を確保する事や税法計算との調整が煩雑となるため、殆どの会社は税法で定める耐用年数を使用しています。
 ここで、IFRS移行時に問題となるのが、定率法が使えなくなるのでは?という事です。これは、2010年4月に金融庁が公表した「IFRSに関する誤解」でも取り上げられています。多くの企業では、建物以外の有形固定資産については、定率法を採用しているので、定率法が使えないというのは、非常に困った問題となります。
 減価償却方法については、IAS第16号60項で、「使用される減価償却方法は、資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなければならない。」とされています。
 現在、我が国の法人税法で採用されている定率法は、250%定率法であり、定額法の2.5倍の償却率を使用します。例えば、1,000万円の備品を取得し、耐用年数が10年の場合、定額法であれば、償却率は0.1となりますが、定率法では、0.1×2.5=0.25となります。よって、1年目の償却額は、250万円、2年目は187万円、3年目は140万円となり、償却期間の早い段階で多くの償却額が計上されることになります。これは、法人税法上の政策的な理由により行われるものであり、各資産の減価の発生態様に合わせたものではありません。勿論、上記IAS第16号で定める資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものではありませんので、現行の法人税法による250%定率法はIFRSでは認められないという事になります。そうすると、現行定率法から定額法に変更するか、あるいは企業独自の仕様による定率法を設定する必要が出てきます。
 また、IAS第16号61項では、「資産に適用する減価償却方法は、少なくとも各事業年度末には再検討を行い、もし資産に具現化された将来の経済的便益の予測消費パターンに大きな変更があった場合には、当該の方法は変更されたパターンを反映するように変更しなければならない。」とされていますので、毎期の見直しも必要となります。
 次に耐用年数ですが、IAS第16号57項では、「資産の耐用年数は、当該資産の企業にとっての期待効用の観点から定義される。」とあるように、企業独自で見積る事が予定されています。そのため、現状の税法耐用年数をそのまま使用出来るのか否かが問題となります。
 →理屈はわかりますが、実際問題として個々の資産毎に耐用年数を見積もる事が出来るのか?そこまでする必要があるのかという疑問があります。税法耐用年数がそのまま個々の資産の耐用年数を適切に反映しているものではないという事はわかりますが、実務慣行としてそれなりの役割を果たしているのではないでしょうか。
 認識後の測定方法ですが、日本基準では、原価モデルのみですが、IFRSでは、原価モデルと公正価値モデルの選択適用となっています。公正価値モデルを選択した場合は、定期的に公正価値により再評価を行い、評価差額は資本の部に計上することになります。実務上は、公正価値モデルを選択するケースは少ないと思います。
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